親が亡くなり、兄弟3人で実家を共有名義で相続した。売るか貸すかは後で決めよう――こうして生まれた「共有名義の空き家」が、数年後に深刻な家族間トラブルの火種になるケースが急増しています。
「うちは仲のいい兄弟だから大丈夫」と思っていても、時間の経過とともに状況は変わります。共有名義の空き家が抱えるリスクとその深刻さを、正確に理解しておく必要があります。
共有名義の不動産は、売却・解体・リフォームのすべてに共有者全員の同意が必要です(民法251条)。一人でも「まだ売りたくない」「思い出の家だから残したい」と言えば、それだけで手続きは止まります。そして、その間も固定資産税・火災保険料・管理費は持分割合に応じて全員に発生し続けます。
共有者全員の同意が取れないまま数年が経過することは珍しくなく、売りたい派と残したい派の対立が続く間にも、建物は老朽化し、維持コストだけが積み上がっていきます。
また、共有者の一人が無断で建物の一部を賃貸に出すなど管理行為の範囲を超えた行動をとった場合、他の共有者との間でトラブルに発展することもよくあります。
共有名義の最大のリスクは、時間とともに状況が悪化する一方であることです。共有者の一人が亡くなった場合、その方の持分はさらにその家族(配偶者・子)に相続されます。最初は3人だった共有者が、10年後には6人・8人になっていることもあります。全員の同意を取り付けることが現実的には、ほぼ難しい状況になっていきます。
さらに深刻なのは、共有者の中に認知症を患った方が出た場合です。認知症になると法律上の意思表示ができなくなるため、成年後見人を選任しなければ同意を得ることができません。後見人の選任には家庭裁判所への申立てが必要で、時間・費用・手間がかかります。しかも、後見人は被後見人の利益保護を優先するため、必ずしも「売却に賛成」とはなりません。
つまり時間の経過とともに権利者が増え、認知症リスクが高まり、解決コストが膨らむ。それが共有名義空き家の落とし穴です。
上述の通り、話し合いのタイミングは早ければ早いほど有利です。全員が健在で、意思能力があり、まだ関係者が少ないうちにこそ、解決への道が開かれています。
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